大阪地方裁判所 昭和46年(ワ)102号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕第一、請求原因一の(一)ないし(四)、二のうち、事故の具体的内容および被告渡辺に運転上の過失があつたとの点を除き、その余の事実はいずれも当事者間に争いがない。
第二、事故態様、過失
<証拠>によれば、本件事故現場は道路の幅員が九、四メートルの南北に通ずるアスファルト舗装された道路上で、道路の両側に幅員一、五メートルの歩道が設けられているが、被告渡辺は加害車を運転して時速約四七キロメートルで北から南へ進行中、道路東端で道路工事作業中のショベルカーを前方約二〇メートルの地点に認めたが、これに特段の注意を払うことなく、加害車助手席に同乗していた訴外井関の方に顔を向け話しかけながら脇見運転していたため、右ショベルカーが南行車道の中央部付近まで後退して停車しているのを前方約二、五メートルの至近距離に迫るまで気付かず、発見と同時に急きよ右転把したが及ばず、加害車の左前部をショベルカーの右後部に衝突させてこれを路上に横転半回転させ、その衝撃でショベルカーを運転していた原告東を路上に転倒させると共に、ショベルカーの傍らで作業中の原告豊増、同八木らにこれを接触させて後記の傷害を負わせたこと、一方、原告らは訴外城之山舗道株式会社の工事人夫で、本件事故現場道路東側の箱作食堂前歩道上で電話線ケーブル埋設工事後のアスファルト仮舗装工事の作業に従事し、堀削した土砂を取り除き他の場所へ運搬していたが、当日、右ショベルカーの正規の運転手が欠勤したため、同車の運転資格のない原告東が、同車を運転して前記歩道上の土砂の運搬にあたり、昼食後の休憩が終つて同食堂前に停めてあつたショベルカーを始動させ約三メートル後退させて車道(バスケットがついている)を南南東の方向に向け、バスケットの部分が同食堂前の歩道上に、後尾が道路南行車道の中央部に達する位置で斜めに停車させ、原告豊増がバスケットの東側から、原告八木が南側からそれぞれ歩道上の土砂をバスケットの中に入れていたところ、前記のとおりショベルカーが被告渡辺運転の加害車に衝突され、その衝撃でショベルカーを運転していた原告東およびショベルカーの側近で作業していた原告豊増、同八木らが受傷するに至つたこと、がそれぞれ認められ、右認定に反する原告三名各本人尋問の結果はたやすく措信しがたい。右事実によれば、本件事故は、前方の注視を怠り脇見運転していた被告渡辺の過失によつて発生したものと認められるが、原告東においてもショベルカーを車道に乗り入れた際、道路の安全についての充分な配慮を怠つていたものと認められる。原告らは作業現場の約一〇〇メートル北の地点に道路工事標識を立て、作業現場には工事用のバリケード四箇を車道上の車道外側線―車道の外側の縁線―上に置き、ショベルカーは右のバリケードに囲まれた車道外側線の歩道寄りの位置に停車させていたと述べるが、右はたやすく措信しがたく、前掲第三二号証によれば本件事故直後になされた実況見分の結果を記載した調書には、現場付近にバリケード等の存在していた旨の記載がなされていないので、もし、原告ら供述のような状態でバリケードが置かれていたとすれば、加害車がこれをはねとばしたことになり、破損したバリケードの散乱した状態が記載されるのが普通であるから、バリケードは原告ら供述の位置には置かれていなかつたものと推認するのが相当であり、また、ショベルカーの停車位置も前記認定のように同道路南行車道のかなり中央部まで進入していたものと認められる。ことに原告東は無資格でショベルカーを運転していたものであるから、車道を通行する車輛の安全を十分確認しえなかつたのではないかと推察される。このように、本件事故は被告渡辺の過失(その過失は大きくもし同被告において前方をよく注視していればショベルカーの動静に応じて、その直前で停止するなり回避するなりして事故発生を防止しえたものと考えられる)と原告東の過失が競合して発生したものと認められる。そして、前記認定の事実および原告ら各本人尋問の結果(前記措信しない部分を除く)によれば、原告らは同一会社の同一現場で働く同僚で、事故当日、ショベルカーを使用して作業することができなかつた(運転者が欠勤していた)のに、ショベルカーを使用すれば作業が能率的であり楽であつたため、たまたま同車の鍵を入手したことから、運転資格はなかつたがかつて運転した経験のある原告東がこれを運転し、他の原告らが同車のバスケットに取り除いた土砂を入れることにして作業を共同分担していたものであり、しかも同車を車道に乗り入れるにつき、見張り、バリケードの設置などを怠り、作業自体の安全ならびに車道を通行する車輛への安全に対する配慮をいずれも欠いていたものと認められるので、原告豊増、同八木は事故時にはショベルカーを運転していたものではなくその近くで作業していたものにすぎないけれども、単に路傍を通行ないし佇立していたものとは異り、車道の安全に注意する義務があつたところこれを怠つたもので、本件事故発生については右原告両名の前記不注意もその一原因となつているものと考えざるをえず、かつ、全体的に観察すれば、原告東の右の過失はいわゆる被害者側の過失として原告豊増、同八木の損害額の認定につき考慮せざるをえないものと考える。以上認定の各事実および本件に顕れた一切の事情を考慮して、過失の割合は、被告渡辺(被告側)を九、原告側を一とするを相当と認める。被告らは免責の主張をするが、とうてい採用しがたい。
(吉崎直弥)